東京高等裁判所 昭和27年(う)3891号 判決
原判決がその引用した証拠により被告人杉田富蔵の罪となるべき事実として原判決添附別表一、窃盗共犯関係一覧表中番号八八、八九の事実を認定していること所論の通りである。しこうして右の八八、八九の両事実を対比するにいずれも犯罪日、場所、被害者、共犯者を同じくし、窃取した物品も同種のものであるが単に数量を異にするに過ぎないこと右一覧表の記載により明らかである。このような場合においては右二個の事実はその間多少の時間的経過が存していたとしても、継続的に行なわれたものと認めるを相当とするのであるから、寧ろこれを包括的に観察して一罪と認めるべきものである。
(イ) しかるに原判決はこれを二個の併合罪と認定していること判文上明らかであるから、原判決はこの点において罪数の認定を誤つたものといわねばならないのであるが、原判決は右八八、八九の事実について、その基本たる事実関係そのものを誤認したものではなく、又この事実は原判決の認定した被告人杉田の共犯関係の窃盗三十八個の事実のうちの二個の事実に過ぎないし、他に原判決は同被告人の単独の窃盗として七個の事実を認定しているのであるから、原判決の右の認定の誤りは、未だ判決に影響を及ぼすこと明らかなものということができない。それ故この点の論旨も亦理由がない。
被告人鳥羽の弁護人の控訴趣意第一点について。
原判決が被告人鳥羽金重の罪となるべき事実として判示第一、第二、第三の事実を認定し、右各罪間に併合罪の関係がないものとして、右各事実について各別の刑を量定しこれを併科していること所論の通りである。
(ロ) しこうして刑法第四十五条後段にいわゆる其裁判確定前ニ犯シタル罪とは先に発覚した犯罪に対する判決の確定した日時迄に犯した罪を指すものと解すべきところ、被告人鳥羽金重の前科調書の記載によると、同被告人は、(一)昭和二十三年七月十日熊谷簡易裁判所において窃盗罪に依り懲役一年、三年間執行猶予の判決を受け、該判決は同年同月十八日確定し、更に同被告人は(二)昭和二十五年四月六日同裁判所において同罪に依り懲役十月の判決を受け、該判決は同年九月二十七日確定していることを認めることができるのであるから、この二個の判決確定の日と原判決の認定した被告人鳥羽金重の判示第一乃至第三の窃盗の日を対照すると、判示第一の窃盗の各事実はいずれも右(一)の判決の確定した日以前の犯罪であるから、判示第二、第三の窃盗と併合罪の関係にあるものでないと認められるが、判示第二、第三の窃盗の各事実はいずれも右(二)の判決の確定した日以前の犯罪であるから併合罪の関係にあるものと認めなければならないのである。しかるに原判決は前記のように同被告人の判示第一、乃至第三の窃盗の各罪間に併合罪の関係がないものとして各別の刑を併科しているのであるから、判示第二、と第三の窃盗の各罪間に併合罪の関係があるにもかかわらず、かかる関係がないものとした点において法令の適用を誤つたものであつて、原判決のこの法令適用の誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるといわねばならない。
それ故原判決の法令違反を主張する論旨は理由がある。